岡林結衣、12歳。日本中が驚いた“女子100m小学生日本記録保持者”が、県体の決勝でついに姉と相まみえる瞬間がやってきた。
この日、会場の空気はどこか違っていた。観客席のざわめき、テレビ局のカメラ、そしてなにより、選手たちのピリッとした集中力。だが、そこにほんの少しだけ、温かい“家族の時間”が流れていたのだ。
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■ 圧巻の小6スプリンター・岡林結衣
彼女の名前が全国区になったのは、たった数秒のことだった。
100mを**12秒30(追い風参考記録なし)**で駆け抜け、日本記録を更新した小学生──岡林結衣。その爆発的なスタートと、後半の伸びは「もう中学生でも敵わない」とまで言わしめた。
だが、彼女にはもう一人、特別な存在がいた。
それが、岡林真帆──高校2年生、県内の短距離トップランナー。そして、結衣の“実の姉”だ。
■ 県体決勝でついに交差する「姉妹の道」
同じ大会に出場することはあっても、学年も部門も違えば、対戦はなかった。
しかし今回、県の“混合決勝方式”の特別招待枠で、結衣が高校生カテゴリに挑戦。そう、実力で“姉と同じ舞台”に立つことを勝ち取ったのだ。
この試合、ただの記録会でも、模擬戦でもない。
公式戦であり、ガチ勝負。
誰もが注目したのは、タイム以上に「どんな表情で、どんな走りを見せるのか」だった。
■ レース直前、結衣が見せた“ある行動”
スタートラインに並ぶその瞬間、結衣はちらりと隣を見た。
そこには、ずっと背中を追いかけてきた姉・真帆がいた。
互いに視線を交わすことはなかったが、結衣がそっと握りこぶしを作ったのを、真帆は気づいていた。
「“負けない”じゃなくて、“認められたい”」──そんな想いがこもっていたのだろう。
■ スタートの号砲──
ピストルが鳴る。8人のランナーが一斉に飛び出す。
結衣は、驚異的なスタートを切った。中盤までトップをキープし、会場がどよめく。
しかし、ラスト20mで姉・真帆がスッと前に出る。高校生の身体の強さ、スピードの粘りが勝った。
結果は、真帆が1着、結衣が2着。差はわずか0.09秒だった。
■ 負けた妹の“笑顔”に、大人たちが泣いた
表彰台で、2人は並んだ。真帆が1位のトロフィーを受け取ったその瞬間、結衣が自然に拍手を送った。
──この拍手に、観客は泣いた。
子どもながらに全力で勝負し、それでも姉を尊敬する気持ちを忘れないその姿は、何よりも美しかった。
■ その夜、家族の食卓で交わされた言葉
レース後、岡林家の食卓にはいつものようにカレーが並んだという。
だが、今日だけはちょっと違った。
「今日のスタート、ちょっと焦ったでしょ?」
「うん。結衣、速かった。」
姉妹の間に流れる空気は、確実に変わっていた。競技者として、対等な「ライバル」へ。
■ 岡林結衣、次なる目標へ
結衣は、来月行われる全国小学生陸上大会で“日本記録更新”に再挑戦する予定だ。
「次は、真帆と同じ全国の舞台でリベンジしたい」
そう語る彼女の表情に、“子どもらしさ”はほとんど見えなかった。
すでに彼女は「世界」を見据えている。
【まとめ】
岡林結衣という名は、今後もっと多くの場で聞くことになるだろう。だが、この日、彼女が見せたのは“記録”ではなく、“心”だった。
そして、スポーツの本質──勝ち負けを超えて、誰かを想い、リスペクトする姿勢を、たくさんの人に届けてくれた。
まさに、「姉妹でつくる100mの物語」は、これからが本番だ。