トレーニングの理論的背景

“トレーニング”を日本語に訳すと、”鍛練”となります。
鍛練とは、体力・技術・精神等を練り磨くことです。
トレーニングを行うことによって、体力が高まることは、一般的に知られていますが、
次の4つの生物学的原則を踏まえてトレーニングを行うことが大切です。

ルーの原則

全身あるいはその一部分がよく用いられた場合、外界の刺激に対応してその働きが増進する、という適応能力を人体は備えています。たとえば、バーベルを持ち上げる際等、大きな力を繰り返し発揮していると、筋肉は強くなります。一方、ベッドに横たわりからだを動かさずに日常をすごしていると、筋肉は弱く細くなります。これらの現象は、生体の持つ適応能力の現れといえます。すなわち、体力を高めるには、普段の生活で発揮する運動強度以上の特別の身体活動を行うことが前提となります。しかし、自分の能力以上の大きな力を発揮するトレーニングを無理に繰り返すと、障害を起こしかねません。これらのトレーニングによる身体の変化を、”ルーの原則”と呼んでいます。

馴化の法則

これは、身体が外部から継続的に刺激を受けた場合、その刺激に対して馴れを生じるというものです。この外部からの刺激が適性で、しかも漸進的なものである場合、この馴れは次第に高度なものとなります。

感受性の法則

外部からの刺激に対する感受性は、身体を構成する細胞が若ければ若いほど強いのです。すなわち、発育期の青少年は、トレーニングによる刺激に対して最も高い感受性を持つことから、もっともトレーニング効果が上がる可能性を持ちます。

正しい立位姿勢の原則

人間の基本姿勢は、脊柱がまっすぐに伸びた状態であり、この場合の動きが最もエネルギー消費量が低く、合理的です。この姿勢以外の状態でのトレーニングはその効果が上がらないばかりか、身体の故障やケガが生ずる可能性があります。また、トレーニングにより、身体の機能の向上をはかる上で、身体の受け入れ準備が整っているかが問題となります。一般に、身体の諸機能の発達パターンに合わせて、それらの機能を高めるトレーニングを行うことが重要です。例えば、幼児から小学生にかけては神経機能、思春期に入ると筋肉系および呼吸循環系機能が急速に高まることから、その発達段階に応じてトレーニングの質と量を考慮しなければなりません。